ぬくめる

日記です

バイト奮闘記

スーパーのレジバイトを辞めて、9月末からパン屋の販売バイトを始めた。11月下旬に新店舗がオープンし、そこのオープニングスタッフとして働く。9月末から11月上旬までは、系列店舗で研修させてもらった。

ケーキ屋さん、お花屋さん、和菓子屋さん、など、「さん付け」で呼ばれるところで働くのに憧れる。バイト何してんの?と訊かれて、「パン屋さんです」と答えるときのすこしのドヤ感。(いま気づいたけど、誰かに話すときだけ可愛こぶって「パン屋さん」って言ってしまう)

パン屋といえば『魔女の宅急便』で、バイトが辛くても、13歳で一人立ちし頑張っているキキを思えば、なんだってできると思っていた。あのポスターのキキのように、物思いにふけた顔をして店番をし「おちこんだりもしたけれど、 私はげんきです」って心のなかで唱えたかった。

軽率だった。老舗の店だからか、教育が行き届いていて、バリバリ体育会系だった。キキの働くパン屋も立派な佇まいなので、もしかしたらキキもそうなのかもしれない。お客さんは滞りなく来店し、パンを袋に入れることに追われていた。キキ気分に浸る余裕はなく、心のなかは「パン落とすな」「パン崩すな」「やべえ」「パンがスベる」「やるしかねえ」だった。

店長は程よく厳しく、程よくいい加減な人で、接しやすかった。どの従業員ともフランクに話している。ユーモアをこれ見よがしに押し付けてくることがあるが、嫌ではなかった。

明るく良い人ばかり働いていた。びっくりした。チームワークを大切に、そのために人間関係を円滑に。みんなフォローしたりお礼を欠かさず伝える。「良い人ばかりですね…」と言ったら「変な人は辞めていくなぁ」と返ってきた。ここではみんなが真面目に働いていたから居心地がよかったけれど、こわくなった。自分は変な人側な気がするから。仕事をしにきているけど、人間関係にも気を配らないといけない。雑談はやっぱり苦手だ。

 

1ヶ月半の研修を終えて、いよいよ新店舗で働く。バイト経験があるからか、研修のときもそこまで緊張しなかった。過去のわたし、ナイス!

オープン2日目に、新店舗初出勤。たくさんのお客さんが来た。社長も店にいて、お店を活気づけている。その社長がですよ、男性のね、ええ、なんかちょいチャラいんですよね、40代くらいのね、その人、もう一人の女性の従業員にデレデレなんですよね、肩ポンポンとか頭ポンとか手の甲でその女性の頬をスリっとするんですよね、ありえねえ!わたしはぜんぜんされなかったけどね、されても微塵もデレないと決めてるけどね、でもきっとされたら笑ってやり過ごすんだろうな。

そんなモヤモヤを抱えつつ仕事し、初めてのことに慌てたりミスったりして、バイトが終わったときは、心ここにあらず、な感じだった。外は顔がうっすら見えるくらいに暗くなっていたから、疲れ切った顔で、だらーんとして歩いた。仕事は反省ばかりで、取ったメモを整理したのを書く用の小さいリングノートを買おうと、ロフトへ寄った。

うお、くっそー!クリスマス!気が早えよ!視界にチラチラと赤と緑。ロフトの便箋コーナーにはクリスマスカードがあって、だれかに贈りたいなぁと思いつつ、それくらいのお金しかないな、と悲しくなった。だれかにお菓子いっぱい入ったどでかい赤い長靴プレゼントしたいよ。ロフトのレジは長蛇の列で、だれもこんなどこでも買えるノートをひとつ持って並んでないよな、とか思って、ばかばかしくなって帰った。

新店舗でのアウェー感にうろたえている。ここにいる自分が嫌だ。嫌なのに笑って流すとか、面白くなくても無理して笑うとか、リアクション大きくするとか、相手に都合のいい嘘をついてご機嫌とったりしてしまう自分が嫌だ。心にもないことを言わないでいたい。でも、円滑にコミュニケーションをおこなうことが目的だから。

そういえば「YOUは何しに日本へ?」で、トルコ人の男性が岸和田だんじりに参加しに日本へ来た回で、トルコ人ドーアンさんが岸和田のお兄さん方に挨拶するも無視を決め込まれるなか、お兄さん方に認められたいと、トルコの伝統的なお酒で交流を図ったりして頑張る姿を見て、ここで働かせてもらうのだから、尊重し歩み寄る姿勢を見せた方が良いのではないかと、思ったのだった。

子供だって立派に媚びるし気を遣う。それがいけないことだと思ってきたけど、大人になったらそれをしないといけないときがあるようだ。でも、媚びと気遣いの違いに気をつけよう。

「ヘルプで入ってほしい」と言ってもらえて、研修していた店の方でも働くことになった。案外うまくやれていたのかもしれない。でもそれは偽りのわたし…そんなに明るくない…けど仕事を評価されているのよ。がんばったからね、よかったね、わたし!