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日記です

YouTubeの夜

姉は休みの日は友だちと遊びに出掛けたり、母と一緒に買い物へ行くとか、引きこもりとは無縁だ。おまけに中学高校と運動部だった。

ここのところ、ずっと退屈そうだ。ストレスが溜まっているのが分かるし、心配になる。毎日0時までに、遅くても1時までに寝ていた姉は、いまは2時に寝ている。「寝られへん」と恨めしそうに呟く。ひとつの部屋の暗やみに、ふたつのスマホが灯る。

「最高だぜぇ〜」と聞こえた。

姉が、東京ディズニーシーのアトラクション、タートル・トークの動画を見ている。

「それ、めちゃ暇な人が行き着く動画やん」と言うと、「でもわたしな、もっと暇なときに見る動画見たで」と返された。「何?」と聞くと、「なぜ水族館にホオジロザメはいないのかっていう動画」と返ってきた。

姉からなぜホオジロザメは水族館にいないのか説明を聞いて、そういえばお母さんって画面いっぱいの文字が上に流れていく動画ばっかり見てるよな、とか話をした。

姉はわたしが学校に行けなかったり、そのことで親に怒られたときでも、引きこもってるだけのときでも、説教などではなく、どうでもいい話をしてくれる。コロナでとくに何もない日々は、会話のネタはYouTubeで見た動画の話ばかりだ。

最近の姉はカワウソの動画にハマっていて、カワウソの鳴き声が部屋に響いている。とてもうるさい。

4月11日

今日は朝からバイトだった。6時に起きた。誰もいない薄暗いリビングで、ぼーっとするのが、落ち着く。この気の抜けた顔、誰も見ることがないんだなぁ。

いつもは自転車だけど、きょうは歩いて駅へ向かった。電車は空いていた。最近は音楽を聴いている。Spotifyを活用している。

バイト先に着いて、さぁ頑張るぞ!と意気込んだ。冷静に明るくやるぞ。働くぞ。

相棒であるレジに目をやると「お客さまから電話が…」とのメモがレジ画面に貼られていた。4月8日の10時に、渡しそびれ。4月8日…?必死にアリバイを探す。4月8日、なにしてたっけ、4月8日、バイトが上手くいかなくて泣くほど落ち込んだ日じゃん、午前中の勤務、わたしじゃん、10時って開店早々やらかしてんじゃん。

もう次からはレジバイトはしないことを、レジに誓った。あなたはいつも正しい。間違えるのはいつもわたし。もうやめにするね。

店は都会から離れているし、住宅街に立地しているので、徒歩で来られるお客さまがほとんどだ。コロナとか関係ない。忙しい!

だんだん余裕がなくなっていく。徒競走をしたあとみたいな、なにも考えられないけど、脳や身体は興奮状態である、あの感じに似ている。向いてないなぁ。世のマクドや王将など飲食チェーン店に働いている人はすごいなぁ。わたしは何に向いているんだろう。

向いてないけど、いろんな人がいるなぁ、と知ることができるのは嬉しいし、有難いし、たのしい。

今日は店内に犬を連れ込んできたお客さまがいた。「申し訳ないのですが、犬はちょっと…」と言ったのだが、お客さまは何一つ表情を変えず、頷いただけで、犬とともにお会計をし、店を出て行った。そんなんありなんだ。その犬の可愛さとお客さまの堂々さに、気持ちが明るくなった。

店は住宅街にあると書いたのだけど、さらに言えば高級住宅街よりの住宅街だ。販売しているものも少しお高いし、生活必需品ではないからか、品の良いマダムのお客さまは珍しくない。まんまるにカットされたトイプードルや、デヴィ夫人が着ていそうなコートみたいな服をまとったチワワがマダムと共にやってきたりする。余裕がないときは、またチワワかよ、と思ってしまう。

店に入ってきた犬は、雑種犬だった。とてもとても可愛かった。きみは店に入ってきていいよ。特別だよ。

 

バイトが終わって帰宅して、しばらくゴロゴロしていると、友だちのかおるちゃんからLINEがきた。学校からクラス発表の手紙が来て、○○だったよ、一緒だったらいいね!とのLINEだった。すぐさまポストから郵便物を引き抜き、手紙を見た。一緒のクラスだ!

かおるちゃんとは一緒のクラスじゃなくても疎遠にならない自信があるし、お互い自立心を持ちつつ思いやることができるから、きっと物理的な距離ができても、仲良しだよ。だから一緒のクラスじゃなくても、べつにいいのだけど、かおるちゃんが一緒だったらいいね!って言ってくれたことがうれしかった。

こんなにうれしいことがあったのに、夜になると鬱々としてしまった。不安だ。やはり人と関わるのがこわい。ずっとびくびくしている。緊張している。警戒心と、自分を晒すことのできない臆病さに腹が立つ。こわいけど、関わりたいとは思っている。「欲望をつなぐものだけが、未来を手にできる」さらざんまい!

学校で気になっていたあの人、あの人がまだ卒業していなかったら、声を掛けよう、会釈でもいいから、と目標をたてている。無事に学校はじまりますように、あの人卒業してませんように、図書館に入り浸って、司書の先生と本の話をしてみたいし、がんばってみるんだ、2020年。コロナは自粛してくれ。死なないように気をつける。がんばりたい。

渡辺大知さん趣里さん松岡茉優さんのんさん橋本愛さんゆっきゅんルアンちゃん嗣永桃子さん山木梨沙さん森戸知沙希さん小関舞さん船木結さん梁川奈々美さん加賀楓さん段原瑠々さんのことを考えたら、生きていくぞと思った。憧れの人と、誇りを持った自分で会いたい。

手軽さには頼らない。ツイッターは眺めるだけにする。質問箱に質問を送らない。いいねされたいからその人のことを褒めない。そんなことバレてしまう。全力で手紙を書け。言葉を尽くせ。実名か、この名前で生きていくぞと決めた名前で関わるべし。学校に行けなかったこと、引きこもってたことを、憧れの人に持ち寄らないで。それで気を引こうしないで。ストーカーとか犯罪はせず相手に不快な気持ちをさせず、実直なファン。友だちになりたいとか彼女になりたいとか特別なファンになりたいとかではなく、人間としてなんか、胸を打つことができたら。

わたしを見て、こんな人もいるから大丈夫的な、下には下がいるんだ、みたいに、誰かが安心したとしたら、それはちょっと嬉しい。嬉しいけど、憧れられることはないし、見下されているのは確かで、もう見下されているほうが楽だったりするのだけど、諦めるな。ここにきてなぜか向上心が。

4月9日

お元気ですか。わたしは最近バイトで、商品であるプリンを冷蔵庫ではなく冷凍庫に入れてしまって、プリン24個をダメにしました。その翌日にホールケーキをひとつダメにしました。その4日後、気を引き締めて出勤したら、制服のポケットから店のシャッターのカギ(共用)が出てきました。散々です。ダメダメすぎて、「この子は入ったばかりなのね」「高校2年生かしら?」と思ってください…と念を飛ばしながら接客をしてしまうときがあります。甘い。甘いよ。

コロナでバイト以外することがないからか、心の大部分がバイトに持っていかれ、ずっと落ち込んでいる。楽しみにしていた「有吉の壁」を見て爆笑するも、CMになったとたん思い出して苦しくなる。

たぶんきっと、20歳、30、40、50歳になっても、こんなミスをするんだと思う。自分が若者であることに救われたけど、「若者でよかった」と思ってしまう自分が忌々しい。本当によくないけど、でも本当によかった、18歳で、よかった。あと、このタイミングで「やらかしよっちゃん」を見れて本当によかった。ケセラセラでは済まされない。大きく反省、小さく成長。


学校行きたいなぁ、勉強したい、なにより友だちに会いたい。ずっと家に、母、姉、わたしの3人でいる。母はサボテンを育てはじめ、姉は筋トレをし、わたしはお菓子を食べまくっている。

家には読みたい本がなく、図書館は開いておらず、Amazonで購入を考えるも、やめてしまう。「大学に行きたいから、とりあえず貯めておこう」という、ゆるい意思が、お金を使うことを邪魔する。ゆるい意思のくせに。

馬鹿みたいだ。とりあえず形から入るみたいな。そうしたら大学に行くことを認めてもらえると思ってるのか!?

以前、父に行きたい大学について話したら、それだけで父がニコニコした。あれ?うまくいきすぎてない?

否定されたかったことに気がついた。そうしたら親のせいにも、自分のせいにもできたからだ。悔やむ、悔やむ悔やむ。きっちりしたい。洗濯物干して取り入れて、すぐ畳んでタンスに入れれるようになりたい。親に言われたことを、1回目で行動したい。週に3回くらいは自分で掃除機かけて、お風呂掃除トイレ掃除したい。わたしに騙されるな。志だけはいいんだ。もうもうとにかく、家族の甘さと厳しさを見ないふりするのはやめろ、受け入れろ。とにかくとにかく頑張るしかない。こんなん一年じゃ取り返せない。一年がんばったからって認められちゃいけない。大学って贅沢だし、学費の面で相談できてないし、お姉ちゃんだって大学反対されたのに。でもごめんなさい、大学に行きたい。でも許さないで認めないでください、家族もこれを読んでいるあなたも。一生かけて頑張らないといけない。

家族に対してちゃんとしたい。バイトも、勉強も、ちゃんとしたい。後ろめたさを感じつつ甘えるのをやめたい。

最後に、わたしへ。これを書いたからといって頑張っていくとは限らないということ、頑張ってなくても、こう思ってるだけで許されるとは限らないこと、これを読み返して「頑張ってるな」と思ったら自戒すること、18歳だから許されるということを文章を書く上でも思って欲しくない、と今日のわたしが思っていることを、忘れないでください。

もう良い子とか良い人とか健気とか素直とか言われたくない。言わせない。

押しに弱くて、流されやすくて、優柔不断で、遠慮がちで、思っていることを伝えるのが怖くて、困ったり焦ったり態度や顔で伝えたりして、察してもらってばかり、もう「どうしたの?」と聞いてくれる人なんていないし、その優しさに甘えてはいけない。自分のこと自分でやらないと。いちいち他人に許可を取らない。

世間一般的に良いとされることをしてきただけで、自分で考えて行動していない。だからなにを言われても、「偽善者」と言われても、「優しいね」と言われても、わたしは返す言葉がない。

良い子と言われてきたけど、良い子って、真面目でつまらないってことじゃないんですか。それはわたしの被害妄想ですか。言わせてしまったわたしも悪い。なんでこんなに気を遣って、言いたいこと言えなくて、ニコニコ笑うようになったんだろう。考えなきゃ。攻撃的ではないのが良いところかもしれないけれど、わたしは攻撃したくなるときがあるし、戦いたい。

自分の大事にしていることを守るために、戦いたい。頭をポンポンされたり、いい子だねぇってニヤニヤされたくない。弱いところを可愛いと思われたくない。弱さを許されてきたけど、もういい加減18歳だから、だからさ!!

まだ脳内お花畑なところがあるから、現実を知りたい。もう使われたくないし、使われそうな人を守りたい。もっと人の汚い部分を知りたい。それを裁くんじゃなくて、軽蔑するんじゃなくて、なんか、他にないだろうか、汚い部分を「分かるー!!クソだな!!」と思いたい。

犬の糞を見るのもいやになって、カラスが真上にいると避けて通るようになった。フンが落ちてきたら嫌だから。フンが汚いとかじゃなくて、フンがついた自分を許せない。笑い飛ばせるようになりたい。

そういえば小学生のころは、本を表紙で選んでいた。可愛ければ読んだし、可愛くなければ読まなかった。うんことか下品なことが書かれていたら、すぐさま読むのをやめた。自分が汚くなってしまう感じがして。あの子はあんな可愛いのに悪口なんていうと勿体無いと思っていた、わたしならこうするのに、こうだったらいいのにな、とか。もう人は人だよ。自由だよ。

もう汚い。自分は汚いから。綺麗に生きたいとは思わない。お高くとまっている自分が本当に嫌だ。完璧に優しい人にはなれないから。

ちゃんと考えて行動をしたい。思いやるってそういうことかもしれない。

1月30日

今日も朝から学校だ。2科目テストを受けるだけなので楽勝だ。

自転車が駅の駐輪場であったことに気づき、駅まで歩いた。こういうことがよくあるので、いつも電車は2本くらい早いのに乗ることにしている。

ゴミが散らばっている。カラスが2匹、狭い歩道に憚っていた。こやつらいつも尊敬するくらい堂々としている。「生きるためにやってますけど?」みたいな、こちらに見向きもせずゴミをつついている。前にこの光景を見たときは、中学の友だちに話をした。今度はかおるちゃんに話したい。

かおるちゃんと話をするのは、お昼休みと学校から帰るときで、だいたいかおるちゃんの好きなSixTONESの話とか、お互いの好きなものの話をしている。会話が弾まなくて焦るときもあるけど、まあ毎日話すんだもんな、会話も尽きるさ、と思うようにしている。

「また明日」を言えるようになった。また明日学校に行けるかどうか確信がなかったから言えなかったし、言わないようにしていた。かおるちゃんとの別れ際、ちょっと緊張する。「また明日」はかおるちゃんにとってしんどくならないだろうか。

テストが終わって帰っているとき、かおるちゃんが息を切らしながらジャニーズのことについて語ってくれた。わたしも相槌に必死になる。かおるちゃんと出会ってから、好きなものは大事にしようと心がけるようになった。

かおるちゃんとバイバイした後、前の高校の演劇部にお邪魔した。演劇と、つながりを大切にしようと思った。精神的に安定してきたからなのか、つながりに掴まっていられるようになった。やっぱりもう引きこもりたくないし、元気でいたい。大事なものは大事にできるようになりたい。

お元気ですか。わたしは元気です。またバイト終わりの帰路、自転車を漕ぎながら泣いてしまいました。やっぱ元気じゃないです。

バイト先の方々はみんなキラキラして見える。そのなかに鈍くてどんよりした奴。わたし。前に社員さんに「なぜここは良い人ばかりなんですか」ときいたら、「変な人は辞めていくからなぁ」と言われた。談笑する従業員の方々を眺めながら、「わたしはいつまでここにいられるだろうか、いるだろうか」と、ぼんやり思った。

学校生活は順調です。毎日学校に行けています。シャトルランをさせられているように辛くなるけど、かおるちゃん効果でなんとかいけてます。あとカントリー・ガールズカントリー・ガールズにハマりました。もう解散しちゃったけど、いまから追いかけます。

かおるちゃんの大好きなSixTONESがデビューしてから、かおるちゃんは元気がよくて、毎日SixTONESの話をしてくれて、インタビューが載っている雑誌を持ってきてくれたりもする。学校帰りにかおるちゃんは「雨だけど、どんよりしなくなったんよね…なぜなら、『Imitation Rain』だから…」と話してくれた。

どうにか生きていけますように、また引きこもってしまいませんように、やはり書くことに掴まっていたい、毎日書くぞ、生きるぞ!