Nook

Nook(ヌック) 「部屋のすみっこ・避難所」

君はちっともさえないけど

真面目な人が好きだ。自転車通学で毎日ちゃんとヘルメットを被る人。校則を守って学校に携帯を持ってこない子。授業で積極的に手をあげる勉強熱心なあの人。先生に見つかって怒られるのが怖くてバレンタインのチョコを持ってこれなかった子。友だちのサボりに付き合うも、周りが気になりすぎてただ心をすり減らしたあの子。

わたしは天性の真面目じゃない。中途半端だ。ドラマの登場人物のようにエリートじゃない。わたしは正義感の強い頭の悪い落ちこぼれだ。秀でたところがない。先生にもクラスにも部活もバイトの先輩に対しても、礼儀の正しさくらいしか自信がない。

電車に乗っていたら、こういう会話が耳に入った。「礼儀正しすぎて、面白みがないねんな」「あー」「テンプレ通りっていうか、つまんない」

ずっと、ずっとそんなこと分かっていた。わたしはつまんない奴だ。だって礼儀正しさくらいしか誇れるものがない。

小さい頃から毒を嫌っていた。親戚に宗教に入っている人はいないし、とくに影響を受けたわけではない。でも、キリストの生き方がかっこいいと思っていた。アンパンマンになりたかった。オスカーワイルドの「幸福な王子」にえらく感動した。銀河鉄道の夜も。宮沢賢治雨ニモマケズみたいに生きたかった。でも、わたしは完璧な純粋ではない。素質がなかった。わたしも毒を持っていた。小学生の頃は悪口を言ったし、傷つけることをよくしてしまっていた。中学生になってからは、悪口を言ったあとの苦しさに耐えられなくて、少なくなっていった。高校生は言わなかった。人の悪口にも乗っかれない。そこがつまんないのだろうか。

毒をうまく使うと、魅力になると思う。賢く使えるのであれば。それがズルくてムカつくし、憧れる。なんか親近感も湧くじゃん。ずっと毒を抑えてきたからか、今は耐性がついたみたいで、自覚することが難しくなった。文句を言うのも怒るのもできなくなった。悪くないのに雰囲気を良くするために謝る。わたしの真面目は魅力的じゃない。真面目が魅力的な人はいる。わたし以外の真面目な人はみんな魅力的だよ。あなたが周りに笑われるたびに愛してるっておもう。どうしたらいいんだろう。わたしの好きな寺山修司には毒がある。宮沢賢治は毒を知っているからこそ、書けた物語がある気がする。人とどう接すればいいのか。どれくらいのことならしていいのか。ぜんぜん分からない。分からなくて、苦しい。真面目を捨てたくない。けど、毒を持ちたい。中間が分からない。極端すぎる。傷つけるのを恐れすぎている。

自分を守りすぎているけど、こんな自分は好きなんだ。毒を出したくない。でも、毎晩自分が嫌になる。毒を知りたい。

わたしは真面目な人を守れない。真面目をバカにする人に言い返せない。何の役にも立てない。スクールカースト底辺は、何にもできなかった。言えなかった。上手く喋れないし、頭が悪いし、要領が良くない。顔も良くない。

護身術や空手を猛烈に習いたい。面白くなりたい。コミュニケーション能力が欲しい。可愛くなりたい。手を出せないくらい可愛くなりたい。誰にも犯されない聖域が欲しい。頭が良くなりたい。賢くなって、優しくなりたい。そんな超絶ハイスペックになって、真面目な人を、守りたい。

でもなれないから、自分も毒を持って、戦うのだ。

『君はちっともさえないけど/宍戸留美』絵恋ちゃん×福田裕彦 - YouTube

宍戸留美さんの曲。これはアイドルの絵恋ちゃんがカバーしてます。絵恋ちゃんはカッコよくて可愛い。こんなふうに、愛したい。