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日記です

10月18日

化学基礎の授業で、塩化アンモニウムと塩化ナトリウムの混合物を分離する実験をした。ペアになった子と実験を進めていった。この子とは体育でもペアだった。女性だと思う。一生懸命に授業を受ける子で、それが美しくみえた。向かい合って、やわらかいボールを投げあった。その子は、自分がなげたボールが少しでも違う方向に逸れると、謝った。わたしが投げたボールが逸れても、何も言わない。上手く投げると「おお!上手いね」などと、反応をくれた。授業の終わりには「有難う。楽しかった!」と言ってくれた。そのあと、化学基礎の授業でまたペアになった。体育の授業と同じように、とても褒めてくれる。いい気はしなかった。「褒めていれば円滑に進むだろう」と考えたもとで褒めているんじゃないかと思ってしまった。その子は褒めるのも一生懸命だった。

その子は実験中に、ほんとうに些細な、失敗とも言えないことをした。このことによって、その子はヤンキーに舌打ちをされ「きっしょ」と言われた。わたしは動揺してしまって、聞こえていないふりをした。その子は下を向いて何回も謝っていた。どうするべきなのか、どうしたらいいのか分からなくて、何も見てません風を装い、その子に「これやってくれない?」と声をかけた。一生懸命にやってくれた。落ち込んだ様子を見せなかった。けれど心の中は分からない。どこにいっても、こういうことはあるのだろうか。心無い言葉を耳にし、心無い行動を目にするのだろうか。転入した先でも、あった。転入先では心無い言葉や行動は一切無いだろうと期待をしていた訳ではない。あるだろうと思っていたが、こんなに露骨なものを目の前で見るとは思わなかった。

わたしはその子を褒めたくなった。一生懸命授業を受けるところ、表情が素直なところ。フードにウサギの耳がついたパーカー、真っ赤なリボンの髪飾り、レースがいっぱいのスカートを「可愛いですね」と言いたくなった。でも、これは褒めるのではなく、慰めかもしれない。失礼なのではないかと考えてしまい言うのをやめた。慰めのために、好意を伝えるのは良いのだろうか。あなたは傷つけられていい存在でない、あなたは素敵なんだ。知り合ったばかりのヤツに言われたくないだろうか。わたしに言う資格があるのだろうか。何も出来なかった。その子と一生懸命に実験を進めた。