ぬくめる

日記です

4月11日

今日は朝からバイトだった。6時に起きた。誰もいない薄暗いリビングで、ぼーっとするのが、落ち着く。この気の抜けた顔、誰も見ることがないんだなぁ。

いつもは自転車だけど、きょうは歩いて駅へ向かった。電車は空いていた。最近は音楽を聴いている。Spotifyを活用している。

バイト先に着いて、さぁ頑張るぞ!と意気込んだ。冷静に明るくやるぞ。働くぞ。

相棒であるレジに目をやると「お客さまから電話が…」とのメモがレジ画面に貼られていた。4月8日の10時に、渡しそびれ。4月8日…?必死にアリバイを探す。4月8日、なにしてたっけ、4月8日、バイトが上手くいかなくて泣くほど落ち込んだ日じゃん、午前中の勤務、わたしじゃん、10時って開店早々やらかしてんじゃん。

もう次からはレジバイトはしないことを、レジに誓った。あなたはいつも正しい。間違えるのはいつもわたし。もうやめにするね。

店は都会から離れているし、住宅街に立地しているので、徒歩で来られるお客さまがほとんどだ。コロナとか関係ない。忙しい!

だんだん余裕がなくなっていく。徒競走をしたあとみたいな、なにも考えられないけど、脳や身体は興奮状態である、あの感じに似ている。向いてないなぁ。世のマクドや王将など飲食チェーン店に働いている人はすごいなぁ。わたしは何に向いているんだろう。

向いてないけど、いろんな人がいるなぁ、と知ることができるのは嬉しいし、有難いし、たのしい。

今日は店内に犬を連れ込んできたお客さまがいた。「申し訳ないのですが、犬はちょっと…」と言ったのだが、お客さまは何一つ表情を変えず、頷いただけで、犬とともにお会計をし、店を出て行った。そんなんありなんだ。その犬の可愛さとお客さまの堂々さに、気持ちが明るくなった。

店は住宅街にあると書いたのだけど、さらに言えば高級住宅街よりの住宅街だ。販売しているものも少しお高いし、生活必需品ではないからか、品の良いマダムのお客さまは珍しくない。まんまるにカットされたトイプードルや、デヴィ夫人が着ていそうなコートみたいな服をまとったチワワがマダムと共にやってきたりする。余裕がないときは、またチワワかよ、と思ってしまう。

店に入ってきた犬は、雑種犬だった。とてもとても可愛かった。きみは店に入ってきていいよ。特別だよ。

 

バイトが終わって帰宅して、しばらくゴロゴロしていると、友だちのかおるちゃんからLINEがきた。学校からクラス発表の手紙が来て、○○だったよ、一緒だったらいいね!とのLINEだった。すぐさまポストから郵便物を引き抜き、手紙を見た。一緒のクラスだ!

かおるちゃんとは一緒のクラスじゃなくても疎遠にならない自信があるし、お互い自立心を持ちつつ思いやることができるから、きっと物理的な距離ができても、仲良しだよ。だから一緒のクラスじゃなくても、べつにいいのだけど、かおるちゃんが一緒だったらいいね!って言ってくれたことがうれしかった。

こんなにうれしいことがあったのに、夜になると鬱々としてしまった。不安だ。やはり人と関わるのがこわい。ずっとびくびくしている。緊張している。警戒心と、自分を晒すことのできない臆病さに腹が立つ。こわいけど、関わりたいとは思っている。「欲望をつなぐものだけが、未来を手にできる」さらざんまい!

学校で気になっていたあの人、あの人がまだ卒業していなかったら、声を掛けよう、会釈でもいいから、と目標をたてている。無事に学校はじまりますように、あの人卒業してませんように、図書館に入り浸って、司書の先生と本の話をしてみたいし、がんばってみるんだ、2020年。コロナは自粛してくれ。死なないように気をつける。がんばりたい。

4月9日

お元気ですか。わたしは最近バイトで、商品であるプリンを冷蔵庫ではなく冷凍庫に入れてしまって、プリン24個をダメにしました。その翌日にホールケーキをひとつダメにしました。その4日後、気を引き締めて出勤したら、制服のポケットから店のシャッターのカギ(共用)が出てきました。散々です。ダメダメすぎて、「この子は入ったばかりなのね」「高校2年生かしら?」と思ってください…と念を飛ばしながら接客をしてしまうときがあります。甘い。甘いよ。

コロナでバイト以外することがないからか、心の大部分がバイトに持っていかれ、ずっと落ち込んでいる。楽しみにしていた「有吉の壁」を見て爆笑するも、CMになったとたん思い出して苦しくなる。

たぶんきっと、20歳、30、40、50歳になっても、こんなミスをするんだと思う。自分が若者であることに救われたけど、「若者でよかった」と思ってしまう自分が忌々しい。本当によくないけど、でも本当によかった、18歳で、よかった。あと、このタイミングで「やらかしよっちゃん」を見れて本当によかった。ケセラセラでは済まされない。大きく反省、小さく成長。


学校行きたいなぁ、勉強したい、なにより友だちに会いたい。ずっと家に、母、姉、わたしの3人でいる。母はサボテンを育てはじめ、姉は筋トレをし、わたしはお菓子を食べまくっている。

家には読みたい本がなく、図書館は開いておらず、Amazonで購入を考えるも、やめてしまう。「大学に行きたいから、とりあえず貯めておこう」という、ゆるい意思が、お金を使うことを邪魔する。ゆるい意思のくせに。

馬鹿みたいだ。とりあえず形から入るみたいな。そうしたら大学に行くことを認めてもらえると思ってるのか!?

以前、父に行きたい大学について話したら、それだけで父がニコニコした。あれ?うまくいきすぎてない?

否定されたかったことに気がついた。そうしたら親のせいにも、自分のせいにもできたからだ。悔やむ、悔やむ悔やむ。きっちりしたい。洗濯物干して取り入れて、すぐ畳んでタンスに入れれるようになりたい。親に言われたことを、1回目で行動したい。週に3回くらいは自分で掃除機かけて、お風呂掃除トイレ掃除したい。わたしに騙されるな。志だけはいいんだ。もうもうとにかく、家族の甘さと厳しさを見ないふりするのはやめろ、受け入れろ。とにかくとにかく頑張るしかない。こんなん一年じゃ取り返せない。一年がんばったからって認められちゃいけない。大学って贅沢だし、学費の面で相談できてないし、お姉ちゃんだって大学反対されたのに。でもごめんなさい、大学に行きたい。でも許さないで認めないでください、家族もこれを読んでいるわたしも。一生かけて頑張らないといけない。

家族に対してちゃんとしたい。バイトも、勉強も、ちゃんとしたい。後ろめたさを感じつつ甘えるのをやめたい。

最後に、わたしへ。これを書いたからといって頑張っていくとは限らないということ、頑張ってなくても、こう思ってるだけで許されるとは限らないこと、これを読み返して「頑張ってるな」と思ったら自戒すること、18歳だから許されるということを文章を書く上でも思って欲しくない、と今日のわたしが思っていることを、忘れないでください。

お元気ですか。わたしは元気です。またバイト終わりの帰路、自転車を漕ぎながら泣いてしまいました。やっぱ元気じゃないです。

バイト先の方々はみんなキラキラして見える。そのなかに鈍くてどんよりした奴。わたし。前に社員さんに「なぜここは良い人ばかりなんですか」ときいたら、「変な人は辞めていくからなぁ」と言われた。談笑する従業員の方々を眺めながら、「わたしはいつまでここにいられるだろうか、いるだろうか」と、ぼんやり思った。

学校生活は順調です。毎日学校に行けています。シャトルランをさせられているように辛くなるけど、かおるちゃん効果でなんとかいけてます。あとカントリー・ガールズカントリー・ガールズにハマりました。もう解散しちゃったけど、いまから追いかけます。

かおるちゃんの大好きなSixTONESがデビューしてから、かおるちゃんは元気がよくて、毎日SixTONESの話をしてくれて、インタビューが載っている雑誌を持ってきてくれたりもする。学校帰りにかおるちゃんは「雨だけど、どんよりしなくなったんよね…なぜなら、『Imitation Rain』だから…」と話してくれた。

どうにか生きていけますように、また引きこもってしまいませんように、やはり書くことに掴まっていたい、毎日書くぞ、生きるぞ!

12月21〜22日

21日は、8時〜13時までひとりでレジをしていた。とても忙しかったが、なんとかやりきることができた。22日も8〜14時までひとりでレジをした。13時55分、ようやく帰れる!と思った矢先、社員さんがやってきた。開口一番に「PayPayのときの精算方法知ってるよね?」と言われ、おそるおそる実演した。社員さんは、うーんと唸ってから「合ってるなぁ」と言った。嫌な予感。

「昨日のレジ締めで金額が合わなかったのよねぇ」と社員さんは呟いた。「何かありましたか」と言うべきところなんでしょうけど、わたしは言いませんよ。

それから社員さんは「レジ点検しようか」と言った。

レジ点検…現金売上額-釣り銭準備金=レジ内の現金 レジ内のお金を数え、過不足があれば、お会計の際にミスをしていることになる。

「めちゃくちゃ疑われてるやん」と思った。1人でレジをしていたのだから、ミスがあれば確実にわたしのせいだ。

誤差がないよう祈りながらお金を数えていった。あ、これまずいやつだ、このマイナスの数字、埋まらない、埋まらない、どうしても。マイナス1604円。

レジ画面には、「-1604円」と表示されていた。社員さんと画面を見つめ、沈黙。「どうすればいい、なにを言えばいい」と混乱した。1分は経っただろう、ようやく「すみませんでした」と言うことができた。謝罪後すぐに「要はこれだけお会計のときに間違えてるってことやで、1604円」と言われた。あの沈黙は謝罪待ちだったんだ、と気がつき、血の気がサーッと引いた。

現行犯逮捕の瞬間。もうクビにしてほしかった。

製造の方から「よくやった」と褒められるくらい、真面目に勤めた。すこしはできる奴じゃんか、と思うことができた。確かにそう思えたし、頑張っていたけど、結果がこうだ。なんなんだ。

萎縮、もっと萎縮。社員さんと目を合わせられなかった。そそくさと帰った。14時過ぎ、雨が降っている。傘はない。駅まで歩き。涙が出てきた。

帰りの電車のなか、中学の友だちのむくるにLINEをした。むくるはすごいよ。むくるはいつも先まで見通した優しさをくれるなぁと思う。想像力と配慮がすごい。「パワハラされてない?」という具体的な心配、ほんとに心強い。

むくると会うことになった。ほんと有難う。

最寄り駅につき、むくるの家まで歩いて向かった。なつかしい。むくるの家に遊びに行くのはいつぶりだろうか。たぶん小学生以来?

むくるの家のちかくの公園は更地になっていた。ここでむくるが飼っている犬を連れて一緒に迎えに来てくれたなぁとか、むくると入るかどうか迷った不気味な神社だ、とか懐かしい記憶が蘇ってきた。記憶を辿って、家へ向かう。

むくるだー!犬だー!なつかしー!

むくるの部屋は綺麗だった。わたしの部屋とは違って、自分でこだわって作った空間のような感じがした。バイトのことを聞いてもらったり、むくるの将来のことを聞いたり、とても楽しかった。おばあちゃん特製のおでんをいただくことになり、むくるとおばあちゃんとおじいちゃんと犬(かわいい名前なのだけど仮名が思いつかないので、犬、としている)で、食卓を囲んだ。あったかい。おいしい。

23日

学校終わりにバイトですわ。朝起きるのが辛かったが、なんとか学校に行った。胃が弱っている。かつてないしんどさだった。かおるちゃんに会うために学校に来ているけど、かおるちゃんと喋れそうになかった。保健室に行きたい。けど、単位を落としたくない。受けるしかない。座っているだけで辛かった。

お昼休み、お弁当を作る時間がなく、買う時間もなかったので、お弁当は無しってことにした。かおるちゃんと喋ることはあまりできなかった。

かおるちゃんと駅まで一緒に帰って、「まだバイトまで時間があるからカフェとかで時間潰すね」と言ったら、かおるちゃんが「ミスドは?」と言った。なんとなく一緒に近くのミスドに行くことになった。

いやいやちゃんと確認を取らねば…と思い、かおるちゃんに「一緒にいいんですか」と訊いたら「うんうん」と頷いてくれた。かおるちゃん、有難う。

学校終わりに、友だちと、ミスド

美味しかった。目をギュッとつぶって「美味しい」と言った。胃が心配だったけれど、かおるちゃんと食べるドーナツなら胃もたれしてもよかった。かおるちゃんと話をした。2020年について。好きなものの追っかけと、受験勉強と忙しそうだ。冬休みと春休み、一緒に勉強をする約束をした。かおるちゃんとなら遊ばずにマジで勉強するだろうな。ほんとにたのしみだ。

かおるちゃんとバイバイして、バイトに向かった。足取りが軽い。

12月20日

バイトうまくいかなかった。バイトのくせに貢献したい気持ちが強くて、でもなんで貢献したいのか自分でもよく分からない。

能力がないから、コミュニケーションも上手くとれないから、態度だけは良くしようと思っている。従業員さんとの会話ではbotみたいな受け答えしかできない。もうbotの方が上手だよ。一生懸命さが、周りにとって厚かましく見えてないだろうか。冷静でいたい。

他の従業員の人に、わたしが系列店舗のヘルプに飛ばされていることを「使われてる」と言われた。「そういう性格だからかな、わたしには全然言ってこないもん!」と言われた。やっぱ使われてるのかー、と思った。なんでこんなに貢献したいんだろ。頑張らなきゃ価値がないし、バイトしなきゃ頑張ってるように思えないし、バイトしなきゃ演劇観れないし本買えないし。

働いてやってます、所詮バイト、とは思えなくて、はー!でもそう思いたい。強気でいたい。能力と責任感が釣り合ってないよ。能力低いくせに責任感強すぎだよ!!

ビビりながら働いている。ずっとこうなんだろうか。だれかのフォローとかできるだろうか。いやそれより自分をなんとかしないと。守ってもらうばかりは嫌だ。能力が欲しい。

結婚式、余興とか誰かやってくれるんだろうか、そんな友だちできるだろうか。余興をやるような人間じゃないわたし、なんだかとてもつまんなく思ってきた。成人式とか同窓会とか、出席するだろうか。

もうなんか、みうらじゅんさんみたいになりたい。面白い悪口言いたい、というか面白い悪口ってあるのか?わたしのおばあちゃんが、道にガムをペッと吐いた時、大好きなおばあちゃんのこともっと好きになった。もっとゆるく生きたいよ。でもゆるくってどんなのか分からない。

カネコアヤノさんの歌を歌えるようになろう。いつでも口ずさめるように、いまから覚えよう。髪の毛染めよう、またビビって前と同じ色を買ってしまった、だけど染めよう。あしたもバイトだ。

12月19日

3・4限目の世界史Aの授業は、とても面白く楽しいのだが、前の席に授業態度の悪い人が座っている。斜め後ろの友だちと話すために、体を横に向けて座る。すぐ前に、その人の横顔。刈り上げられた頭にはサングラス。緊張する。その人はだいたい寝ているけれど、起きているときは暇つぶしをするかのように先生の言うことに噛みつく。もう寝ていてほしい。だけどその人にも授業を受ける権利はある。その人はさっきまで寝ていたのにいきなり積極的に発言しだしたりと気まぐれに授業を受ける。先生は驚きもせず普通に対応し、参加する態度を歓迎しているようにも見える。ちょっと悔しくなる。前の席の人は、授業終わりに先生をドアップにして動画を撮っていた。インスタのストーリーらしい。そんなことすんなよ!!

その人の言動になにも共感できないのはいいのだけれど、なぜそうするのか想像もできないのは少し怖い。その人をヤンキーと形容してしまうのが嫌だ。ヤンキーの要素を持っている人だ。その人の前でのわたしは、地蔵モードに入っていて、その人がなにをしてもなにを言っても心を動かさないようにしている。それがその人の存在を無視してしまっているように思えて、自分が少し嫌になる。どう接すればよいのか分からない。そもそも接する必要はないのだろうけど。自意識過剰だ。だけど、無視するのは違う気がして。人間だ、同じ人間、だけど分かんない!同じ人間だけどこんなのにも違うのですね、そう自分は自分、他人は他人!

自分と他人の線引きをちゃんとしたい。他人の言動に対して、わたしは責任を感じなくていい。自分に責任を持つ。自己認識がぜんぜんできていなくて、疲れてるのにバイトも遊びも詰め込んじゃうし、お金ないのに遊びの誘いを断らなかったり、観劇の予約とってしまったり、当事者意識がどうにかしてる。最近、かおるちゃんは「なにを話せばいいのか分からなくて自分の好きなことを長々と話してしまう」らしいことを知り、申し訳なくなった。お客さま目線で生きてきたよ。

かおるちゃんと出会ってから、中学からの大切な友だちとまた話すようになって、自分の好きなものや嫌いなもの、そういうことをぜんぜん考えてこなかったなぁと思い知った。向き不向きも分からずやってきている。そりゃ疲れますよ。人に意見を求められても言えない。というか何も浮かんでこない。空っぽだ。自分の望みを言うことにも責任があるのだと知った。人に意見を言えないのはなぜか、意見が浮かんでこないのはなぜか考えたので、聞いてください。

意見を求められるとき、たとえば複数人で会議やグループワークをしているとき。まずそこに適応するのに時間がかかる。この場所は広いなぁ、寒いなぁ、この人はこんな声でこんな喋り方で、足を組んでて、おしゃれで、眠そうだな、とか。ただ頷くわけにはいかない。中心で回す人がいないが、これはわたしがやったほうがいいのか?などと、適応に時間がかかって、考えなければいけないことに頭を使わず、そのせいで意見を訊かれると何も出てこないのでは、と。

帰りの電車に、サンタの扮装をした男性の外国人の方が1人席に座っていた。日本に何しにやってきたのだろう。いや、観光客の方ではないのかもしれない。サンタクロースは浮いてなかった。当たり前にそこにいた。日本人がその格好だと浮いていたと思う。サンタクロースがしているイヤホンから、ロックっぽい洋楽が音漏れしていた。頭を前後させてリズムをとっていた。機嫌の良いサンタクロース。その格好をしている理由を知りたい気持ちよりも、ありがとうという気持ちが強い。ありがとうサンタクロース。あなたのおかげで、とてもたのしい。

友だちのかおるちゃん

かおるちゃん(仮)は、定時制高校で出会った友だちだ。去年の秋に同じクラスになった。気が合いそうだ!と直感して、警戒されないようにと、ニヤニヤして声をかけた。ナンパみたいで気持ち悪かったと思う。

会ったらなんとなく話すようになって、校外学習を一緒に回ることになった。

美術鑑賞をした。アダムとイヴが題材の絵を観て、「空が暗いから林檎をたべちゃった後なのかな」とかおるちゃんが言ったとき、なんだかすごい人といっしょにいるな…と感じたのを覚えている。ふたりでじっくり絵を観た。

それから、いっしょにお昼ごはんを食べるようになった。いまもそうだけど、あまり会話は弾まないし、毎回おなじ話題な気がする。おたがいの好きなものを紹介しあっている。かおるちゃんはツイッターとインスタを駆使して情報を仕入れていて、いろんなものを教えてくれる。かおるちゃんは本が好きで、絵にも興味があって、可愛いものが好きだ。2020年に催される美術作品展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(61作品すべて初公開!)に行く約束をしている。日本初来日のゴッホのひまわりをいっしょに観る…なんてすてき…

かおるちゃんが好きなものについて話す姿が好きだ。こちらの目をまっすぐに見て、「〜なの!〜なんだよ!」と良さを伝えてくれる。かおるちゃんはテキトーなことを言わない。嘘がない気がする。こちらの何気ない問いにも、ゆっくり時間をつかって正確に答える。なのでこちらもテキトーなことはしないよう慎重だ。

ぱっと見のイメージでは、「かおる」より「かおり」な感じがするけど、こういう真面目で真剣なところが「かおる」な感じがして、かおる(仮)とした。

かおるちゃんと友だちになれて嬉しい。

今年も奇跡的に同じクラスになった。お互い休みがちなので、会えることは少なかったけど、最近はふたりとも頑張っているのでよく会える。

この間、学校終わりに遊んだ。タピオカを飲みながら話した。それから本屋を回った(めちゃくちゃ楽しかった)。「どうしようか?」「なにする?」と言いながら、駅の周辺をぐるぐる回った。おたがい遊び方が分からない。けどとても気が楽で、たのしかった。ぐるぐる回ってからは、駅近のショッピングモールの外にあるベンチに座った。またぽつぽつとお話をした。

わたしがバイト先で媚びてるんじゃないかと嫌になるんだ、と話したら、かおるちゃんは「うーん」と頷いたあと、スマホを見た。ちょっと寂しいな、と思っていたら、かおるちゃんがバッと顔を上げて、「媚びじゃないよ!」と言ってくれた。いままで聞いたなかでいちばん大きな声だった。かおるちゃんもびっくりしていた。「媚び」の定義がよく分からず、スマホで「媚び」を検索していたようだった。テキトーなことは言わない、かおるちゃん。

長井短さんのコラムが好きなんだ、と伝えると、すぐにコラムを読んで「めちゃいいね!」と言ってくれた。長井短さんが夫の亀島一徳さんとやってる交換日記もオススメした。

それからわたしは意を決して、「交換日記しない?」と言った。かおるちゃんは驚きも戸惑いもせず、「しよう」と言った。こちらが面食らった。

「青春は向こうからやってこないよね」ということで、やりたいことをおたがい言っていった。下鴨神社納涼古本まつりに行くとかクリームソーダを飲むとか修学旅行をするとか、クリスマスプレゼントを贈りあうとか。交換日記のいちばん初めのページに書こう。

帰り際、かおるちゃんが「そういえばぬくちゃんと写真撮ったことない」と言ったので写真を撮ることになった。うれしかった。駅なかの大きなクリスマスツリーをバックに、写真を撮った。恥ずかしかった。インスタ映えなんて興味なかったけど(かおるちゃんも興味がない)、その写真を見返してはニヤニヤするので、インスタ映えもいいかもしれない。積極的に思い出をつくっていこう。